恩送り

月曜日、小学校の同級生のお母さんのお通夜に行ってきた時の話だ。お母さんは92歳。最後までしっかりと生きて天寿を全うされた。読経が終わり住職さんのお話になる。その中に出てきたのがこの「恩送り」という言葉だ。たくさんお世話になったけれども亡くなってしまった人には恩返しができない。そういう時はあなた方の周りにいる人にその恩を送ればよいと言う。そして恩を送られた人はまた誰かに恩を送る。そうやってたくさんの人が幸せになるとういうお話だった。

この「恩送り」という言葉、すでにご存じの方も多いのだろうけど、自分には初めてでとても新鮮に感じた。なんと優しい響きを持った言葉なんだろうと。お通夜が終わっての帰り道。寒いはずの夜道なのに不思議と心は暖かい気持ちになっていた。

さっそく家に帰ってネットで調べてみる。目に留まったのは井上ひさしさんのエピソードだった。井上さんは中学生時代に本屋で国語辞書を万引きしようとして店番のおばあさんに見つかってしまうのだが、おばあさんは彼に罰を与える代わりに誠実に生きることの大切さを教えるのだ。井上さんはその時のことを「返しても、返しきれない恩」と振り返る。井上さんは後にその本屋さんのあった一関市で何度もボランティアの文章講座を開く。これを井上さんは「恩送り」と言い表している。「恩送り」というのは、誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送る。その送られた人がさらに別の人に渡す。そうして、「恩」が世の中をぐるぐる回っていく。と語っている。

恩を受けた人に直接返すのは「恩返し」。「恩送り」は、受けた恩を直接相手に返すのではなく、周りの誰かに送るということだ。「恩返し」は特定の人が対象で恩を返したところで一応の完結をするが、「恩送り」は相手は誰でもよいし終わりもない。送った恩は巡り巡ってたくさんの人を幸せにしてやがては自分や家族や友人に返ってくるかもしれない。

ごいさんもいろんなの人のおかげでここまで生きてこられた。その中には顔も名前も知らない人もたくさんいるのだろう。知らないうちに助けられている。そう考えてみると誰に「恩送り」をしても当たり前のように思えてくる。今まで受けた恩を返す形でこれから出会う人たちに少しでも「恩送り」をしていこうと思う。肩肘張らずにちょっと嬉しいことをしてもらったらちょこっと嬉しいことを誰かにしてあげる。これってできそうだね。

今年はこの「恩送り」という言葉を大事にして生きていきたい。今の気持ちも忘れずにね。

 

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