生徒の死を悼む

今日から2学期が始まった。いつもなら夏休みを楽しんだ子たちがみんな戻ってきて平凡に始まるのだが、今日は違った。夏休み中に、生徒が交通事故で亡くなっていたのだ。しかも、1年生の時も2年生になった今もごいさんはその子を教えている。その子は勉強も頑張っていて、どちらかと言えばおとなしめのタイプの子だった。ごいさんはその子に亡くなる3日前に会っている。駅前のスーパーで買い物をしようとしていた時、「先生」って向こうから声をかけてきた。にこにこしながら近づいてくる。いつもの彼らしいスマイルだ。1学期は定期テスト前に病気になって、思ったような成績が残せなかった。よほど悔しかったのだろう。「2学期は頑張る。」「大学に行きたいんだ。」そんな話を10分ぐらいして別れた。そのにこやかな笑顔が、今日一日ごいさんの頭の中を駆け巡っていた。大事な子を一瞬で失ってしまったご両親の気持ちをおもんばかると本当に胸が詰まる思いだ。どんな言葉も彼らを慰める言葉にはならない。

ごいさんは、これと似たようなことを先生になったばかりの頃にも経験している。その子の亡くなる前日の授業で、「もうちょっと頑張んなきゃだめだよ。」、「先生、なんとかしてよ。」なんて会話をして楽しんでいた。その翌日は5月3日だった。彼は、オートバイの後部座席に乗っていた。何の弾みなのかは分からないが、そのオートバイが転倒し、後ろに乗っていた彼が車道側に落ちて対向車に轢かれてしまったのだ。お通夜に行ったが、本当に暗いお通夜だった。この時のごいさんのショックは相当なもんだった。亡くなる前の日にあんなに楽しく話をしていたのに。あまりにも悲し過ぎる。

今回は、ごいさんはしばらく学校に行ってなかったので、事故のことを知ることもなくお通夜にも行けなかった。それがとても残念だ。機会があったらお線香をあげに行きたいのだが、ご両親の気持ちを考えると安直に伺うこともできない。少しばかり時を待った方がいいのだろうか。彼のいなくなったクラスの授業は明後日にある。ひょっこり現れるのを、ごいさんは期待してるかもしれない。

でも彼が亡くなったのは紛れもない事実だ。今は静かに彼の安らかな眠りを祈りたい。

 

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