友人の見舞い
一昨日の夜、友人のU田さんから電話がかかってきた。8月に新築の家を訪ねた時のあの友人である。だいぶやつれた声だった。聞けば1週間ほど前から入院しているとのこと。耳の後ろ辺りが痛くて頭痛もひどく薬を飲んでも痛みが取れない。さらに詳しく調べてもらったところ、耳の後ろに腫瘍があるという。細胞を調べた結果、良性だということが今日判明したのだそうだ。腫瘍があると聞いた時は死をも覚悟したようでかなりのショックを受けたようだ。結果が出てそれまでの不安から一気に解き放たれて誰かと話したくなったのだという。それでごいさんが選ばれたのは何とも光栄なことだ。素直に嬉しい。
すぐにも駆けつけたい気持ちだったが、昨日は学校のオープンスクールがあって出勤だったのとまずは安心できる状態だということで、今日お見舞いに行くことにした。耳の下にガーゼを貼ったりして痛々しそうだが、話が続いていくと次第に元気になって会話も弾むようになった。2時間ほどいたが帰る頃にはいつものU田さんに戻ったような明るい感じになっていた。来て良かったよ。それでも帰り際に注文をつけた。今度入院するようなことがあったら真っ先に電話をすること。それから、ごいさんが入院したら連絡するのですぐに駆けつけること。そして、お互いに80歳ぐらいまでは生きようよ…ってね。U田さんは下を向きながら頷いていた。
U田さんは嘘をつかない。いや、嘘をつけない。本当に不器用な人だと思う。彼は誰に対しても本当のことしか言わない。だから生徒に通じない時もあるが、やがて生徒はU田さんのその魅力に気づくことになる。やぼったさはあるけど人間性は素晴らしい。誰に対しても本気になれるんだ。それが生徒から愛される所以である。そしてごいさんの彼に対する信頼もまた絶対なのだ。
病院の玄関を出て病室の方を見上げた時、なんだか可笑しさが込み上げてきて、一人にんまり笑ってしまった。今日は元気になりつつあるU田さんの顔を見ることができて本当に安心した。
若い時はがんとかには全く無縁だと思っていた。暴飲暴食も繰り返していた。病気にもならなかったから、死ぬことなんて遠い遠いさらに遠い先だと思ってた。でもこの年になるとちょっとしたことが気になるようになった。ボケるのも怖い。がんも怖い。だけど今すぐ死にたくもない。この先、どんな人生が待っているのだろう。
なんくるないさー……かな。頑張るよ。