雨の中の墓参り

今週の火曜日に父の墓参りに行ってきた。いつものように母を迎えに行くと、早くに起きてぼたもちを作って待っていた。母はこの日を楽しみにしているのかな。ふとそんなことが頭をよぎる。(今度聞いてみよう。)熱いお茶と一緒にぼたもちを一個ほおばる。もう何年も同じことを繰り返している。そして母の決まり文句が出る。「もう一個食うか?」

本当はお彼岸の中日に行くことにしていたのだが、天気予報によると雨が強く降るとのこと、もしかしたら雪になるかもしれないということで、急きょ火曜日に変更したのだった。実際、彼岸の中日はけっこうな雪が降って、かなりの寒さだった。ただ火曜日も雨がそれなりに降って寒さもかなりのものだった。それでも雪よりはましだったかという感じ。

平日で雨という割にはお墓にはそこそこの人たちが訪れていた。みんな同じような考えなのだろう。綺麗な花がお墓に飾られている光景はいつ見ても清々しい。早速に母は赤いカッパを着こんでお墓を拭きだす。見ているだけで寒くなってくる。続いて隣の伯母さんの墓も拭き始めた。何分ぐらいだろう、ただもくもくと拭いている。それから花を飾り、持ってきたぼたもちとお菓子を供える。もちろん雨だからビニール袋に入れたままだ。

全てが用意された頃合いを見計らってお線香に火をつける。(これは僕の仕事。)そうして合掌。いつもならここで少しのんびりするところなのだが、この雨ではどうしようもない。とにかく寒くて、母の体も心配だ。お墓参りして体を壊してしまっては本末転倒だしね。ともあれ母の記念写真だけはしっかり撮影して、祖母の墓へと向かう。

祖母の墓まではここから車で1時間ほど。横浜のど真ん中にある。雨はさらに勢いを増している。もうお墓も綺麗にしているどころではない。とりあえずお花とお菓子を供えてお線香を手向けて合掌する。母にとっては自分の両親や兄妹の眠る墓だ。何度も来られるものではないからゆっくりしたいところなのだろうけれどさすがにそんな悠長なことも言っていられない。

こうして今年の春のお彼岸の墓参りもどうにか無事に終了した。いつものように丁寧とまでとはいかなかったけれど、安堵感と満足感が母の表情には表れていた。こんな寒い中、88歳の母が雨に濡れながら墓石を拭きお線香を手向けに来る。それだけで十分立派なことだと思う。

帰りの車の中では、また母のいつもの言葉が聞こえてくる。「疲れる、疲れる。もう次は来られないかもしれないよ。」もうずっと聞いている言葉だから、オオカミ少年の言葉のように聞き流しているけれど、でも案外本当のことだったりするのかな。そしてここで気づいたよ。こうして出かけるのを楽しみにしているのは母よりも本当は自分の方だっていうことに。だから、秋のお彼岸もまた一緒に来よう……って、心で思った。

f:id:goisan:20180321111042j:plain※お彼岸の中日の雪の降る様子。積もることはなかった。