母さんの誕生日

昨日は母の89歳の誕生日だった。昼から、ま~るいケーキを買って訪ねて行った。丸いケーキはここのところのお決まりになっている。「なんでこんな高いもん買って来る?」と母は言うけど、にこにこしていて嬉しそうだ。そうだよね、ごいさんが子供の頃は本当に貧乏だった。それでもクリスマスの日だけは丸いケーキを買ってくれた。あのバタークリームのケーキの美味しかったことは今でも忘れてないよ。

今こうして自分も妹も幸せに生きていられるのは母さんのおかげだと思っている。こんなケーキなんて何個でも買える、そんな生活ができるなんて小さい頃は夢のまた夢の世界だった。でも今はそれが現実だ。小学生の時に将来に役立つからと家計をやりくりしてそろばん塾に行かせてくれた。おかげで算数が得意になった。勉強が好きだからと高校や大学にも行かせてくれた。

母さんはずいぶんと僕のわがままを聞いてくれた。妹は高校を出てすぐに働き出して家にはほとんど迷惑をかけなかったけど、僕はお金もずいぶんと使わせて迷惑のかけ通しだった。だから妹以上に母さんにはお返しをしなければいけない、そう思っている。

ここ2~3年でぐんと年を取った感じだね、ゲートボールも仲間が出歩けなくなったりしてできなくなってしまった。前には1時間ぐらいしていた散歩も今は30分。一人でテレビを観ている時間がずいぶんと長くなった。あんなに話好きの母さんだから、話す相手が少なくなって物足りなさを感じているんじゃないか。

自分が母さんの年齢になった頃に、今の母さんのように一人で生きていけるかな。母さんはたった一人で毎晩どんなことを考えているんだろう。体のあちこちが痛くて時々自分たちに訴えるけど、母さんの気持ちを考えずに適当に返事をしている自分。母さんが自分たちに言う時はずいぶんと思い悩んだ末のことだと分っているはずなのに。

今までのお礼をしたい、大事にしなければいけない。そうは思っているのに、面と向かうと怒ってばかりいる自分が情けない。いつも帰りの車の中で自己嫌悪。「90歳までは元気に生きてよ。それまでは僕にやりたいことをやらせて。」と何年か前に言ったけど、もう来年だ。母さんはその約束をちゃんと守りそうだ。僕も守らなきゃね。

若い頃はいつも険しい顔ばかりしていた母さんも、今は優しい顔をしたいいお婆ちゃん。昔は叱られてばかりの自分が、今は母さんを怒ってばかり。いいんだ、遠慮は要らない。たまには昔のような強い母さんに戻って叱ってくれてもいいんだよ。

じゃあ母さん、この1年も怪我無く病気もしないで元気に90歳を迎えてね。89歳の誕生日おめでとう。

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