ショート・ショート・ストーリー

その1 常磐線

小さい頃、何度となく常磐線の各駅停車に乗って横浜に住む祖母のところにやってきた。それは小さいごいさんの大きな大きな楽しみだった。何十個とある駅の名前もすべて覚えてしまった。お化け煙突が見えだすともうすぐ終点の上野駅だ。4本の煙突が1本に見えたり2本、3本にも見えたりする。その様子を窓から身を乗り出すようにして見入っていた。日暮里や上野という名前を聞くとき、いつもその頃の思い出がよみがえってくる。


その2 雪見だいふく

ある日のこと。朝、テニスコートに向かう途中で、ゴミを出しているおばあさんを見かけた。自然にその透明なごみ袋に目が行った。その中にあのアイスクリームの雪見だいふくの箱があった。あっ、このおばあちゃんがこれを食べたのかな。それともお孫さんにあげたのかしら。いや、きっとこのおばあちゃんは雪見だいふくが好きなんだ。そう思った。うちの母さんも好きなんだ。翌日、雪見だいふくを2箱買って母さんを訪ねた。


その3 病院にて

先日、病院に自分の薬をもらいに行った時のことだ。病気というほどではなくて、3か月に1度、自分ではおまじないぐらいのつもりでいる。そこで、息子さんに支えてもらいながら車いすから降りるおじいさんを見た。息子さんは60歳ぐらいに見えた。だからお父さんは優に80歳は超えているだろう。息子さんの優しさが伝わってくる何とも微笑ましい光景だった。いつか自分も息子にそうしてもらう日が来るかしら。それも嬉しいかも…なんて思ってみた。


その4 雲

昨日今日と雲一つない快晴のお天気だった。心が洗われるような爽快な気分。でも雲一つない日が毎日続いたらどうだろう。ふだん雲があるからこそ時々現れる雲一つない快晴の日に感動できるんじゃないか。なあんだ、雲さんって案外いい奴なんじゃん。それに時にいろんな形をして我々を楽しませてくれる。真っ黒な雲さんだって少しばかりふくれっ面をしているひょっとこさんみたいに思えてくる。それが爆発して雨を降らせる。雲さんあっての快晴の日がある。実は、雲さんもありがたい存在だったんだね。

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