新聞配達をしていた受験生
今週初めから神奈川県の公立高校では入学試験が行われている。日程はそれぞれの高校で若干違うが、ごいさんの所は月曜日が学力試験で火曜日が面接試験となっている。そして水曜日と木曜日が採点日だ。ほとんどの受験生にとっては初めての体験だろう。真剣に試験問題に取り組む姿からは、合格したいという思いがひしひしと伝わってくる。それはもちろん自分のためなのだろうけど、親のためというのもあるのだろうとごいさんは勝手に考えてみた。
この時期、いつも自分の高校受験の頃が思い出される。その日の朝もごいさんは4時に起きる。いや、母親に起こされる。まだまだ真っ暗で寒い中、身支度を整える。そして近くの新聞販売店に向かう。そう、ごいさんは新聞配達のアルバイトをやっていたのだ。自転車を漕いで2時間近くをかけて120軒ほどの家に新聞を配る。中学3年になってすぐに新聞配達のアルバイトを始めたのだった。動機はギターを買いたかったから。本当はエレキギターが欲しかったのだが当時でも何万円もして、結局買ったのは6,000円の質流れ品のクラシックギターだった。アルバイト料は月に3,000円だったから、それでも2ヶ月分だ。他に、前からずっと欲しかった顕微鏡も買った。顕微鏡の中のミクロの世界は本当に魅力的で、毎日飽きもせずいろんなものを見ていたよ。そんなこんなで高校入試の日も新聞配達をやってから出かけて行ったのである。
新聞配達は朝の4時半から6時過ぎぐらいまでだ。だから夜も早く寝る。それに夕方までしっかり遊んでくるから、家で勉強することはほとんどなかった。雨の日も雪の日ももちろん配達はあった。雨の日には自転車が倒れて新聞がびしょ濡れになってしまったこともある。雪の日は自転車が使えないから、小脇に抱えて一軒一軒歩いて配った。ギターなんて遊び道具のようで家で買ってもらうわけにもいかないから自分で働いて買おうと思った。だから家に相談もなしにその販売店に直接交渉しに行った。今考えると中学生にしてはいい度胸があったものだと思う。新聞配達は1年間続けた。自分で始めたことを簡単に止めるわけにはいかない。その思いは何十年経った今でも変わっていない。
入試の前日に雪が降って、当日は道が凍っていた。高校の正門を入った緩い上り坂で、足を滑らせもんどり打って転んだ。「すべったぁ」と自嘲的に呟いたのを覚えている。もっともこの頃の高校入試は、神奈川県独自のア・テストと中学校の内申点が重視され、当日の学力試験でよほどでなければ落ちることはなかったようだ。もちろんその頃のごいさんたちは知る由もない。
さて、今どきの受験生の気持ちってどんなものだろうか。今は、塾などで鍛えられているから平然としているようにも見える。いや、やっぱりその頃のごいさんたちと同じような気持ちもあるかな。だって、彼らはまだまだあどけなさの残る中学生なんだから。
この受験の時の気持ちを忘れなければ、きっと楽しい高校生活を送れるはず。ごいさんが約束するよ。
写真は、職場近くの団地の中の桜並木(4月1日の記事に登場)。今年もその時が来れば間違いなく美しい桜で覆われる。