いもうと
ごいさんには2つ下の妹がいる。先日21日が誕生日だった。小さい頃は、母親が働いていたから、昼間はたいがい二人でいた。そしてどこに行くのも何をやるにもいつも一緒だった。その頃でも保育園とかはあったけど、そんなところに入れるほどのお金は無い。いつもお邪魔虫のようについてくる。喧嘩をすれば妹の方が口が達者で、結局ごいさんが手を出して妹が大泣きしては母親に叱られていた。妹がどんなに悪くてもだ。妹は勉強より働くのが好きだったから、高校に入ってからはよくバイトをしていた。ごいさんはと言うと、妹の苦手な勉強を時々手伝ってはお金をせびっていた。
高校を卒業して就職。そこで今の旦那さんと出会い結婚した。22歳になったばかりの10月31日だった。結婚するという話を聞いて、ごいさんはちょっとうろたえた。妹が永遠に手の届かないような所に行ってしまうような気がしたからだ。だから、結婚相手の旦那さんとは結婚式当日まで会うことは無かった。それでも兄として何かしなきゃいけない、兄の威厳を示すのはこの時をおいて他にないと考えた。妹に聞いたらウエディングドレスが欲しいと言う。ごいさんは何か月か必死にお金を貯め、どうにか結婚式に間に合った。当時のお金で10万円くらいはしただろうか。兄らしく妹にプレゼントしたのはその時だけだったかもしれない。泣いて喜んでくれた妹の顔はきっと一生忘れられないだろう。
旦那さんはごいさんと同い年で、ごいさんの高校の友人の同級生だということが後から分かって、何となく親しみが持てるようになった。彼も高校を出てすぐに今の会社に入って40年以上も勤めている。彼はいろんな点でごいさんより優れている。まずは車の運転が上手い。それに決断力や行動力がある。いつも明るくひょうきんで人気者だ。何より妹を愛している。それだけで十分なのだ。いい旦那さんに出会えた妹は本当に幸せだと思う。2人の息子もしっかりと働き3人の孫にも恵まれている。
今年のお盆に、3人で死ぬ順番の話をした。縁起でもないと思われるかもしれないけど、この位の年齢になれば当たり前のようなもんだ。結論は、まずごいさんが死んで、次は妹。そして最後に旦那さん。妹は絶対に一人では生きられないだろう。旦那さんとごいさんではその重要度が違う。ごいさんも妹が死ぬのは見たくない。だからこの順番がベストなのだ。まあ、こんなもんさ。でも、後20年は生きようって誓い合ったよ。
今日31日は、妹たちの38回目の結婚記念日だ。二人にはまだまだ元気でいてもらいたい。二人がいるからごいさんも頑張れる。二人が幸せならごいさんも幸せなんだ。
小さい頃は邪魔だ邪魔だとしか考えていなかったような妹の存在。でもいつも妹が傍にくっついていてくれたから寂しくなかったんだね。小さい頃の二人でいた時間、それは本当に大切な時間だったんだ……って、今は思っている。