若い先生たちへ
水曜日の日の帰り際、一人の若い先生が近づいてきた。情報の授業を教えているT内先生だ。4月から新しい学校に異動するという。そう言われて、T内先生がこの学校に新採用としてやってきて5年になるのかと思った。神奈川県では新採用の先生は最初に赴任した学校は5年間しかいられないというのがルールなのだ。彼とは同じ教科ではないし担当のグループも違っていて職員室も2階と3階とで別れていた。ただ彼がその前年に他の学校で臨任という形で働いていた時に、そこにいたごいさんの教え子と仲が良かったというのが唯一の共通な話題だった。少しでも接点があればちょっかいを出すのがごいさん流の親しみの表現。それでも日常的に会って話をするという機会はほとんどなかったと思う。
4年前にごいさんは退職したのだが、その前の年から若い先生たちには自主映画の作成だったりみんなで箱根まで走ったりと、とにかくこんな年寄りの相手をよくしてもらった。そんな思いが高じて、自分が歩んできたことで少しでも役に立てればということで「若い先生たちへ」という冊子を作って配ったのだ。退任式の前の2~3日で書いたものだから実にお粗末なものである。恥も外聞もなく、20代から30代の前半ぐらいまでの20人くらいに配っただろうか。みんな優しいからにこにこして受け取ってくれる。その時のごいさんは正しく有頂天気分だった。
それから4年が経って、彼がごいさんに4月からの異動を告げた後にこう言ったのだ。「あの冊子は自分のバイブルとしてきた。それで担任も無事にやり遂げることが出きた。これからもずっと大事にしていく。」と。もう春だけど、それ以上に暖かいものを感じてしまった。年を取るとすぐに感動してしまう。自分もとっさに「ありがとう。」という言葉を返していた。
家に帰って、もう一度その冊子に目を通してみた。その時は書くことそのものに迷いもあったけど、それに本当に大したものではないけど、こうまで大事にしてくれた先生がいたことで、なんかまた自分に自信が持てたような気がする。
せっかくなので写真に撮ってこのブログにも残しておくことにした。冊子だとしまいこんだら二度と出てこないような気もするから。見にくいけど表示を200%ぐらいに拡大すればどうにか読めそうだ。これでいつでも読める。彼の一言でまた一つ嬉しい思い出が誕生した。