第9回 呑兵衛達の旅 ~8月24日~

前日早めに寝たお陰で4時少し過ぎに目を覚ました。朝走ることはみんなに言ってあるので自分の寝場所はいつも出入り口のすぐ側だ。シャツ、パンツはすでに履いているので、浴衣を脱ぎ靴下を履く。いつもそっと出るつもりでいるのだがドアの音が微妙に大きい。目を覚ましても寝たふりをしてくれているのだろうなどとありがたく思いながら外に出る。

時間は4時半を少し回った所。6時までに戻ることを考えて13キロぐらいを目安とする。まずは誰も歩いていない温泉街を一気に駆け下りていく。その後6.5キロの折り返し地点までは周りを見渡しながらのんびりモードだ。その分、帰りは淡々とホテルを目指す。最後の1キロの上り坂はけっこうきつかったが、予定の13キロを無事に走り終えて温泉に浸かる。う~ん、まさに極楽。

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宿を8時半に出発して、お土産を求めて「日本こけし館」に立ち寄る。英会話でお世話になっている講師の先生に小さなこけしの付いたキーホルダーを購入。他に可愛いらしい顔をしたこけしと目が合ってしばらく眺めていたのだが埃をかぶったのを想像して買うのを諦めた。続いて鳴子狭に寄ったのだが、今回はそれほどの印象は無かった。秋の紅葉の時期にはきっと素晴らしい眺めを楽しめることだろう。

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帰りに仙台駅でお土産を買いたいというみんなの要望を入れて青葉城址の見学は取りやめる。そして最後の見学場所となったのが伊達政宗を祀る霊廟「瑞鳳殿」だ。100段はあるという長い階段がけっこう辛い。ようやくにして辿り着いた「瑞鳳殿」の絢爛豪華さを前にして、改めて伊達政宗の生きざまを思う。

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さて旅の〆の昼食は仙台名物の牛タン定食だ。お店の名前は「旨味 太助」と言う。目と鼻の先に「味 太助」という店があったがどうも兄弟でやっている店らしいのだが、何かのトラブルで今では袂を分かっているらしい。4枚の牛タンとテールスープがついて1,500円也はお手頃価格だ。味も良かったし歯ごたえもあってまずまずだったと思う。肉がカナダ産とでっかく書いてあるのも堂々としていて好感が持てた。

食事が終わるとすぐにレンタカーを返却。これから1時間余りがお土産タイムだ。毎回のことだがこのお土産代が馬鹿にならない。それに荷物も増えて重くなる。それでも買わなければならないのは、こうやって気楽に旅に出られるのも周りの皆さんのお蔭だから。最後に冷えたビールを購入して新幹線に乗車。そしていつものように横浜駅近くの居酒屋で反省会をして帰宅と相成る。

こうして9回目の呑兵衛旅行は終わった。今年もいろんな場所を見学したくさんのことを学んだ。全体的にはいつものように楽しく過ごせたのだが、一つだけ自分の気持ちの中にひっかかるものを感じた。それは仲間と合わせることがずいぶんと下手になったということだ。今年は仕事から離れて人とのつき合いが大きく減ったせいなのか。それともそういった気持ちの衰えみたいなのもがあるのか。

そんなことを考えては、自分はこれからどうしたものか、なんてことでちょっと悩んでいる。

 

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第9回 呑兵衛達の旅 ~8月23日~

翌朝は2度寝をしたせいで起きた時にはすでに5時を過ぎていた。7時からの朝食のことを考えて一瞬ためらったが距離を短くしても走ることにした。日が上がってはいたがそれでも朝の松島海岸沿いを走るのは気持ちが良かった。誰もいない雄島と五大堂を見学しての1時間ほどのランニング。ホテル入口から玄関までの最後の坂道を上り終えたら汗でびっしょりになった。でも満足感一杯。大きなお風呂で汗を流して気分もすっきり爽やかになった。

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この日は松島湾の島巡りから始まった。8時30分に宿を出発して9時出航の遊覧船に乗る。50分の行程で1,500円也。いろんな説明も過去に何度か聞いているし、それに船からの眺めだとどうしても松島という実感がわいてこない。ほどよくエアコンの効いた船内で揺られていたら途中からうとうとした状態に陥ってしまった。

次は五大堂。さすがに早朝とは違い人出が多い。ここの土産物屋さんで笑う猫なるおもちゃが売られていた。お尻を触るとけたたましい声で笑いだすのだ。これが何回聞いても面白い。見ているこっちまでつられて笑ってしまう。心がいかにも健康になりそうだ。迷いに迷ったけど猫好きの母のために一つ購入することにした。いつも敬老の日のプレゼントで悩むけど今年はこれで何とかなるかしら。

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松島を後にして石巻日和山公園に向かう。高台にあるここからは震災の被害の様子が一望できる。石ノ森萬画館を指してI坂さんと喋っていたら一人の人が声をかけてきた。地元の方のようで、特に聞いたわけではなかったが慣れた感じでその時の様子を話し始めた。30分間ぐらいだっただろうか。地震が起きて津波が来るまでの時間になぜ逃げなかったのかという心理状況やこれからの復興計画など、実に興味深い話だった。振り返ってみるとこの話が今回の旅行で一番思い出深いものとなった。

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「南浜町……新興の住宅地として賑わっていたがすべて流されてしまった。この跡地は公園になる予定だという。」f:id:goisan:20170823120827j:plain

思わぬ話を聞いて少し遅れ気味になったけど、続いて「こもれびの森」という森林科学館を目指す。ここの所長さんが神奈川県の元教員というご縁で立ち寄ることになったらしい。その佇まいを見ていて昔生徒たちと行った野外教育活動が思い出された。クマがあちこちに出没するのだという。ごいさんには到底できない仕事だと思った。なんだかんだと1時間ほど案内をしてもらいながら話を聞くことができた。

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ということで今日の宿のある鳴子温泉に向かう。鳴子と言えばもちろんこけしで有名な場所だ。おっとホテルに直行かと思いきやその前に「尿前(しとまえ)の関」に寄るという。いかにもM橋さんらしい。彼はこういう知る人ぞ知るというところが好きなのだ。もっともだからこそ自分たちの勉強にもなるのだけどね。

芭蕉の『おくのほそ道』に登場する。義経や弁慶との関わりもあるという。」

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温泉はかなり強い硫黄のにおいが鼻を突いて、いかにも効能があるという感じ。夕食は豪華でお腹いっぱいになった。今日の仲居さんはベテランさん、こういう時のお爺ちゃんたちは実に静かなものだ。2日目の夜は例年通りにみんなのパワーが極端に落ちる。眠い飲めないの連発だ。それでも10時半消灯って、やっぱり早いよなあ。

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第9回 呑兵衛達の旅 ~8月22日~

朝7時50分に横浜で待ち合わせをして東京駅に向かう。ここで伊豆から出てくるI坂さんと合流。当然のように二人で車中での飲み物を物色。8時56分、東北新幹線やまびこ129号は予定通りに動き出す。飲み物をテーブルの上に置いて二人はやんややんやと盛り上がっている。他の3人はM橋さんの車の運転ということに気を遣っていて宿まではお酒を口にしない。こう書くといかにも我々が人でなしのようだけど、二人が騒ぐのは毎度のことだから暗黙のうちに認めてもらっている……と思っている。さて仙台までは約2時間の旅ということで、早く飲まないと着いてしまうなんてことを言っていたら足りなくなって車内販売で1本追加することになった。まあこれも本当は計算のうちなんだけど。I坂さんと売り子さんの会話が絶妙で何とも面白いのだ。車内販売は利用すべしだね。

「ここに崎陽軒のシウマイがあれば言うことがないのだが……」f:id:goisan:20170822085544j:plain

11時に仙台駅に到着しすぐにレンタカーを借りて最初の見学地の多賀城跡に向かう。今は何もなくただ跡が残るのみだが、すでに奈良時代にここに陸奥国府と鎮守府が置かれて政治や文化の中心地として栄えていたという。都からこんなにも離れたところでと思うだけで感慨深いものがあった。その後、埋蔵文化財調査センターに寄って昼食となる。昼食は「すし哲」というお寿司屋さん。どうやら相当な人気店らしくお客さんが次々とやってくる。自分はちらし寿司を注文。寿司なんて回転ずししか食べたことがないので旨いのかどうか分からないが、値段が値段だから旨いのだと思うことにした。

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それから塩釜神社瑞巌寺と見学する。瑞巌寺は平成の大修理ということだったが、本堂が見られたことは幸いだった。もっとも仙台には伯母さんが住んでいたこともありここには何度も来ていてごいさんにとってはさほど目新しくない。今日の見学はどちらかというとお付き合い的な気分だ。続いて「みちのく伊達政宗記念館」を見学。ここで一通り伊達政宗の人生を辿ってみて、彼の人となりが理解できたような気がした。

塩釜神社 奥の古い建物が本殿」f:id:goisan:20170822144637j:plain

瑞巌寺の本堂」f:id:goisan:20170822153129j:plain

「蝋人形展示 右に立っている子が政宗f:id:goisan:20170822163149j:plain

さていよいよ待望の宿に向かう。その宿は「大観荘」と言い、少し上った丘の上に建っている。部屋のガラス窓の向こうにはいかにも松島らしい光景が広がる。夕食は懐石料理風。担当してくれたのは研修生という名札を付けた若い女の子だった。こういう若い子にちょっかいを出すのはいかにもお爺さんの集団らしい。そんな会話の中でなんとその子が神奈川県のそれもS渡さんの家の近くに何年間か住んでいたというのが分かって、ますます盛り上がった。その子にも身近に思ってもらえたのは何よりだった。

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部屋に戻って恒例の2次会となる。旅の初日ということでみんなさすがにまだまだ元気だ。自分も初日の夜が一番楽しい。明日も旅が続くという安心感からだろうか。そんな楽しい時間も最近はみんな呑まなくなって早く寝てしまう。それがちょっとばかり物足りない。呑兵衛達の旅は普通の旅になるのかな、それとも終わりが近づいているのかな。そんなことがちらっと酔った頭をよぎった……ような。

 

第9回 呑兵衛達の旅、始まる

今年もまた呑兵衛達の旅が始まる。いつだったか忘れたが、飲み会の席で青森県出身のI坂さんがたまたま口にした田酒というお酒の名前。それならば青森まで行って呑んでみようではないかと、いかにも酒好きの考えそうな計画がまとまったのだ。もちろんそこは先生の集団だ。ただ酒を呑みに行くのでは芸がない、しっかりと観光も楽しもうということになった。この旅の一切はM橋さんという社会の先生に任せっきり。彼は知識も豊富だし実際にあちこち歩いているからまさに適任なのだけれど、要は自分たちが面倒くさいだけなのだ。

さてその地に行ってそこの地酒を呑むということに味を占めた連中たちはさらに大いに盛り上がり、翌年からの地酒巡りの旅を恒例の行事とするようになった。そうして、青森、秋田、岩手、山形、石川(能登)、福井、京都(丹後)、福島ときて今年は宮城県、松島と鳴子を訪ねる。それぞれで美味しいお酒を呑みそして思い出もたくさん残してきた。その中で、東日本大震災の前年に訪ねた岩手の三陸の思い出は忘れられないものとなった。

明日は朝の8時56分発の東北新幹線で仙台に向かう。う~ん、今から電車の中で旨そうにビールを呑んでいる自分の姿が思い浮かぶ。しばらくぶりのワクワク感だ。こういう気持ちって、一人でマラソン大会に出向く時には起きることがないのだが。やはりこれも気のおけない仲間との一緒の旅というその安心感が大きいのだろう。

ということで改めてその仲間のメンバーを簡単に紹介しようと思う。まずは今年71歳のM橋さん。この旅行の添乗員兼カメラマン。若い頃から教職員組合で活躍して、今も退職者で作る組合の委員長をやっている。また現地ではレンタカーの運転も担当するが、そこいらのジェットコースター以上のスリルを味あわせてくれる。実に豪快な運転だ。だからごいさんはいつも一番後ろの席で隠れている。

次はごいさんの1つ上のO矢さん。教科は同じ数学。実は高校の先輩でもある。彼が大学受験をした時は前年の東大入試の中止の煽りを受けて大混乱した年だった。彼もこのことをよく口にする。彼の人生の大きな岐路だったに違いない。いつも落ち着いていて的確なアドバイスをくれる。ごいさんにとって頼もしい存在だ。

次は1つ下のI坂さん。ごいさんのブログにもしょっちゅう登場している。彼のように生きることがきっと人間の本来の姿なのかと思う。実に自然に生きている。彼とは今まで本当によく呑んだ。1回3時間は当たり前、最長で12時間というのがある。その間に何を話したか全く記憶にない。酔ってしまえば話なんかどうでもいい、そこに友がいれば、そんな感じだったのだと思う。

そして2つ下のS渡さん。グループ唯一人の独身貴族。当然お金もいっぱい持っているのだが、競馬をやって使おうとしたら逆に100万円稼いでしまったという。お金のあるところにお金が集まる、確かにそう思いました。

とまあ、こんな呑兵衛5人の珍道中。いよいよ本日スタート。帰ってきてからのレポートを楽しみに待っていてくださいね。では、行ってきます。

 

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顔、顔、顔

前にも書いたけれど、街中を歩いているとついその人を観察してしまうなんていう癖がごいさんにはある。全体の格好や歩いている時の雰囲気、そして顔かたちだ。イケメンだとか不細工だというのではない。この前は耳の大きさや鼻の形だった。一度気になると取りつかれたように見てしまう。例えば鼻だと少なくともその日は鼻しか見ない。耳なら耳だけだ。もちろん相手に気づかれては失礼だからさりげなく見る。遠くを見るふりをして焦点は手前のその人の鼻や耳に合わせている。よく見るとみんな見事なまでに違う。確かに指紋の代わりに使えるのも納得する。きりっとした鼻もあればぺちょっとした鼻もある。自分の倍もあろうかという大きな耳の人にはびっくり。こういう人ってたくさんの幸せを運んでくるのかな。鼻と耳の他に目や口と合わせれば無限大の組み合わせができる。人の顔が個性的で魅力的なのはそういうことなんだと合点する。

とまあ、そういうことで最近はと言うと顔全体の表情というのが気になった。それも一人で街中を歩いている時の表情だ。その人たちの顔を見ていると、では自分はいったいどういう顔をして歩けばいいのかなんてことを考えてしまう。これまた個人の自由だなどと言われそうだけど、こんなことをうだうだと考えるのもごいさんの悪い癖だ。それからはすれ違う人を注意深くしかも気づかれないように眺めては歩いてみる。ターゲットはあくまで一人で歩いている人だ。

結果としてこれがいいと思える顔には出会えなかった。ということは自分も大した顔して歩いていないというわけだ。自分もそうだが大方の人は歩く時の表情まで気にすることはないのだろう。ましてわざと変な顔をして歩くなんて考えられない。これが日曜日とかで、家族や恋人、仲のいい友だちと一緒にいる時の表情はがらりと変わってくるから、やはり心の持ちようということになるのかと思う。ということは、一人で何気に歩いている時にこそふだんのその人となりがそのままに顔の表情に表れているってことじゃないか。

自分もすれ違いざまに他人の肩や荷物が振れただけで顔が歪んでしまうことがある。この前はあやうく正面衝突しそうになって相手に思わず舌打ちされた。何とも言いようのない不快感を覚えたのだが、その思いがしばらく顔の表情から消えない。それに何かを考えながら歩いていて顔を曇らせている自分に気づくことが度々ある。そんなことを考えてみたら自分もずいぶんと不満顔で歩いているのかもしれないと思った。

一人で歩く時は誰に気づかうこともない。だから余計にふだんの様相がそのままに表れる。そんな時はゆとりのあるいい表情を作りたいと思うのだが、応急処置的に作ったものは少しのはずみですぐに剥げてしまいそうだ。やはりふだんからの表情作りが大事なんだと思う。それにしても一人で歩く時の表情って本当に難しい。こんなことを考えている自分は変?でもちょっぴり意識したら少しは改善できるような気がしているんだ。

 

生徒の描いた37年前のごいさん。いい顔、している?f:id:goisan:20170817105126j:plain

 

伊豆のラン合宿

ラン仲間のS田さんと2人で、先週の木曜日と金曜日に伊豆の国市に住むI坂さんの所で、ラン合宿をしてきた。とは言え、飲むための口実のようなものでたいして走るわけではない。それでも見知らぬ土地を走るのはいい気分転換になる。午前中の夏期講習を終えたS田さんとは、小田急海老名駅で待ち合せる。東海道線駿豆線と乗り継いで田京駅に到着。駅前のスーパーで夕食(?)の材料を購入してI坂邸に向かう。

この日は桂川沿いに修善寺駅まで行き、折り返して大仁駅近くにある温泉旅館をゴールとする約10キロのコースだ。すでに5時半で空はどんよりとした雲で覆われ暑さはあまり感じられない。それでも走り出したらすぐにシャツが汗でびっしょりになってしまった。

S田さんについていく形でキロ5分30秒のペースを維持しながら修善寺駅に到着。ここからはもう2キロ余り。終わりが見えてS田さんのスピードが上がる。あっという間にゴールだ。そして温泉に浸かる。この時の開放感は半端じゃない。冷たいビールがいかにも美味しそうだがここはぐっと我慢の子であった。

I坂邸に戻るともう8時を回っていた。バイクで先に帰っていたI坂さんがフライヤーと食材を用意して準備を整えておいてくれた。いつもながら本当にありがたい。このフライヤーのことはだいぶ前に彼のブログで知って気になっていた。やっぱり揚げたての天ぷらは最高。失った塩分の補強とばかりにわさび塩をさっと振りかけて頂く。う~ん、旨い。

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走った後のビールもこれまた最高の味わいだ。当然の如く焼酎へと飲み物は変わりいつものように際限がない。I坂さんに会うのは実に4か月ぶり、S田さんに会うのも2か月ぶりになる。それにこのところ毎日が英語漬けでまともに日本語を使っていないから、今日はそのうっ憤を吐き出すように次から次へと言葉が出てくる。

いろんな話をする中でちょっと気づいたことがあった。それはみんなそれぞれにこれからのことを話しているということだ。もちろんたいした中身ではない。でもそれで改めて思ったのだ。生きている限り誰にだってまだまだ未来はある。その未来を追い求めることを簡単に放棄しちゃいけないってね。どんなに素晴らしくても過去はあくまで過去にしか過ぎないのだからって。

さて、翌朝は二日酔い気味で目が覚めた。今日は走れないと弱気になっていたら、「走りましょうよ」とS田さんが声をかけてきた。何度も言われて嫌々覚悟を決める。今日のコースは山を一つ超えるというハードなもの。最初の3.5キロで一気に350mほどを上り、その後韮山反射炉に向かって駆け降りていくというもので、約13キロのコースとなる。

上りはキロ7分台後半のペースでほとんど歩くような感じ。逆に下りは4分台前半のペースで油断すると足がもつれてすっ転びそうな勢いだ。ともあれ無事に走り終えてシャワーを浴びる。冷たい水が何とも気持ちいい。何だかんだと言いながらも当初の日程はすべて消化した。となれば当然〆の乾杯と相成る。

I坂さんには毎度のことながら大変お世話になりました。心から感謝しています。

 

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夏の匂い

少し前の朝、ごみを出しに行った時のことだ。前を国道が走っているのだが、朝の通勤時間帯で車の往来も激しい。ごみを置いての帰りにその流れを見ていたら、突如としてムワーっとした蒸し暑い空気が押し寄せてきた。ところがこの匂いがどこか懐かしい。少し考えて、そう言えば子供の頃の夏はいつもこんな匂いがしていたのを思い出した。そこら中に響き渡るセミの声。ようやく夏休みが訪れて、解き放たれた心。6週間という長い休みをどう過ごそうかと考えただけで心が躍る。宿題の計画を立てるのも案外楽しみだった。

そう、なんか久しぶりの夏らしい匂いを嗅いだのだ。あの頃はエアコンはもちろんのこと扇風機だってない。家に居る時はランニングシャツにパンツ一枚といったスタイルだ。そう言えば蝿もたくさんいた。祖母に頼まれて毎日何十匹もの蝿を蝿たたきで叩き落した。いや叩き潰した。まさに丹下左膳鞍馬天狗になったかのような気分だった。夜は蚊帳をつって寝る。これがまた子供ながらに怖さを感じたものだ。その頃の夏の映画と言えば決まって怪談だった。その映画によく蚊帳が登場するのだ。そしてその脇に幽霊が恨めしそうにたたずんでいる。子供のごいさんはどうしても蚊帳の外が気になってなかなか寝付かれなかった。

冷蔵庫もなかった。スイカは井戸水で冷やすのだが、これが本当によく冷えて美味かった。あの頃は食べ物の保存ができなかったから毎日の食事は大変だったろう。当然家では氷は作れない。夏になると近くのかき氷屋に毎日通った。毎日と覚えているくらいだから確かに安かったのだと思う。もちろんイチゴかメロンかそれにレモンやスイというシロップが単にかけてあるだけだ。でも本当に美味しかった。

海まで近かったから毎日のように海水浴に行った。プールは日立製作所の工場の関係で一つだけあったのだが有料だった。それでも伯父さんのつてでたまに無料券が手に入る時があった。この時はやっぱり嬉しかったし、毎日のように行ける子がちょっぴり羨ましかった。海はやっぱり真っ昼間に行くのが好きだ。砂浜に寝っ転がってあの真っ青な空を見上げる。あの底なしの大空をね。そうすると心が大きくなったような気がしてくる。そして大きな夢が膨らむんだ。

今までもこの匂いって何だろうなんて思うことがたびたびあった。その答えを探し求めていくと小学校ぐらいまでに遡る。何十年と年を取ったのにあの頃の匂いって意外と忘れていないんだ。思い出って写真で代表されるように見たことやしたことが記憶されるという印象が強いけど、こういった匂いというのも十分に思い出になるのだと改めて認識した。考えてみれば、おふくろの味なんていうのもある。これも思い出の一つかな。

何気ない匂いへの思い。またすぐに忘れてしまうから書き留めておくことにした。

 

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