横浜マラソンの思い出(後)
妹たちと別れて、高速道路の下を走って淡々と南部市場へと向かう。彼らは電車を乗り継いでここでも応援してくれるということだったが、到着がわずかに遅れたようで、ごいさんが去って行く後姿を陸橋から見送ったという。その時の自分は、次はゴール前で待っていてくれる彼らに向かって走ること、それだけしかなかった。それよりもこの辺りでボランティアをしているというはてブロランナーのnaoさんに会えなかったのが残念だった。
この南部市場折り返し地点が20キロ地点で、この10キロは54分02秒で通過した。そうしていよいよ横浜マラソンの大きな目玉である首都高速に入る。眺めが予想以上に素晴らしい。それまでずっと高架下の暗い道だったからかもしれないけど、急に視界が開けた。空が眩しく見える。気持ちも弾んで、しばらくの間はボランティアの人たちに声をかけながら軽快に走る。しかし高速道路の起伏は思った以上に激しい。それに始めは新鮮に見えた景色も次第に単調に思えてきた。
10キロ余りに及ぶ高速道路も終わりが見え30キロ地点を通過する。この10キロは54分43秒。31キロ辺りで高速を降りD突堤へと向かう。D突堤はごいさんがいつもボランティアをしている場所だ。毎年、多くのランナーの苦しい表情を見ながら大きな声で励ましている場所だ。そして今年、実際に走ってみたら本当に苦しかった。自分がこれまで掛けてきた声がどれくらい空しいものだったかを思い知らされた感じだ。
高速を降りてから35キロまでの区間は走る気が起こらなかった。何とか足は動かすもののスピードがまったく出ない。エイドでいったん立ち止まると1~2分があっという間に過ぎてしまう。自分を追い抜いていくたくさんのランナーを見やりながらようやっとして35キロ地点を通過。この時、ゴール付近で自分を待つ妹夫婦や息子の顔が思い出され、そして「走らなきゃ」という思いがごいさんを再び走り始めさせた。
やがて見慣れた光景が近づいてくる。そして山下公園。いつもは歩道を走っているのだが、今日は堂々と道路の真ん中を走る。応援の人の数もかなりのものだ。誰か知っている人がいるかもしれないと思うと、弱い自分は見せられない。高揚感でいやでもスピードが上がる。そうして40キロ地点を通過してあと2キロ。この10キロは後半に多少巻き返して61分12秒でクリア。
そしてハンマーヘッドの入り口で待っていた息子を発見。こんなふうに息子と出会えるなんて最高の気分。マラソンを続けてきて本当に良かったと思った。もう残りは1キロだ。ますますスピードは上がる。フィニッシュ地点手前で妹夫婦と再会。しっかりとハイタッチを交わして、ゴールに向けての栄光の195mは全力ダッシュ。タイムは3時間55分33秒。グロスで3時間59分32秒。
前日まではいつものマラソン大会とは少し違った感情で精神的にけっこう負担が大きかった。だから、走り終えた時の安心感と達成感はいつも以上に何とも言えないものだった。ともあれ、横浜マラソン、全体の雰囲気はとても良かった。応援の人も多くてそれに都会的で、なかなかいい大会じゃないか。参加料は高いが一度くらいは走ってもいいのではと思う。
妹が「兄ちゃんが走っているのをもう一度見たい」と言っていた。どうしよう…かな。