ハッピー・マイ・バースデー

誕生日のことなどまったく書こうとは思わなかったのだが、子供がケーキを買ってきてくれたものだから、少しばかり書いてみようという気になった。

昨日遅くに会社から子供が帰ってきて、パソコンに向かっているごいさんの背中にいつものように「ただいま」と声をかける。これまたいつものように「お茶でも飲むか」とごいさんが言うと、「ああ」という返事が返ってくる。一緒にリビングに行くとおもむろにテーブルの上にスーパーのレジ袋を置く。何かと思って見たらチョコレートケーキ2つと丸いモンブランケーキだった。

「どうしたんだ」って聞いたら、「あれだろう」と言う。そうかあれね……って、今日はごいさんの誕生日なのだ。遅い時間でケーキ屋さんは閉まっていて、それでスーパーで買ってきたという。まったく飾りっ気のないケーキだけどなあ。「だいたい父さんが甘いものを食べている所を見たことがないから、ケーキを買っていっていいのかも迷った」と言う。確かに、去年の健診でHbA1cの値で注意信号になってから甘いものを避けるようになっていた。

でも今日はそんなことは関係ない。早速にお茶を入れてみんなでいただくことにした。母親の分と自分の分もちゃんと買ってくるところはいいね。最近は甘いものをあまり食べていないから、かなりの甘さに感じる。それでも半分ほどを一気に平らげた。もしかしたら子供は父親がこんなにガツガツ食うのを見てびっくりしただろうか。そうやって食べ終わると何事も無かったように子供は子供の世界に、自分は部屋に戻ってまたパソコンに向かう。なんて淋しいって。いやいやそれでもう十分満足なのです。

その日は朝から妹や元の同僚それに教え子からメールをもらった。誰かが自分の誕生日を覚えてくれている。とても嬉しいことだ。いくら年をとってもその気持ちは変わらないと思う。昔、ごいさんが働き出して間もない頃、ベテランの先生が授業で教えている生徒の誕生日に「誕生日おめでとう」と言って鉛筆を1本ずつ渡していたのを思い出す。鉛筆1本より、その声かけの一言がどれほどにその子たちの心をとらえたか。どんな子だって自分のことを意識してもらえるのは嬉しいことだ。時に反抗的になったり、自分の殻に閉じこもったりするのも、そういった気持ちの表れなのだと思う。ごいさんがそんなことを考えるようになったきっかけだった。

ということでごいさんもめでたく64歳になった。昨年までは体重が62kgほどあり顔もふっくらしていて年よりだいぶ若く見られていたのだけど、この一年で7kgも痩せて、今のごいさんは頬もこけて人並みのお年寄りになったようだ。口うるさいS田さんは、急に痩せてジジくさくなったと言う。若い頃からいつも年より若く見られて、40、50になってもそれなりの風格というものが感じられず、そんな自分が好きでないこともあった。ようやく年相応に見られるようになったかと安心する一方で、若く見られるのも悪くなかったかなんて思ったりもしている。なんだか可笑しい。

ともあれ、自分にとっての新しい一年が始まった。しっかり生きなきゃね。

 

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