「ほろ酔いコンサート」
日曜日の夜に親友の健さんからメールが入った。「27日の夕方、空いてる?」この日は毎年恒例のアメ横での買い物に出かける日だったので「6時ぐらいなら大丈夫。」と返した。そうしたら今度は「有楽町で4時頃はどう?」とメールが来た。時間的には間に合いそうなので「何とかなるかも。」と返信したところで詳細が送られてきた。この日は奥さんと二人で加藤登紀子の「ほろ酔いコンサート」に行く予定だったのだが、奥さんの都合が急に悪くなったのだという。そこでその代役としてごいさんを選んでくれたというわけだった。
予想した通り、会場はおじいちゃん、おばあちゃんで溢れている。全体的には我々よりもいくぶん年上の人たちのように見える。「赤い風船」「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」「百万本のバラ」と彼女の曲をずいぶんと口ずさんだものだが、おときさんのファンはいわゆる団塊の世代ぐらいの人たちが多いのかな。
4時15分に入場するとロビーでは大関の一斗樽の振る舞い酒が配られていた。まずは遠慮がちに。恐る恐ると2杯目。少し慣れたか3杯目。図々しくも4杯目。思わず「酒は大関 心意気」のCMを思い出す。あの頃はまだ高校生で、日本酒を飲み始めるのはまだまだ先のお話。でも、あのコマーシャル、何といっても田宮二郎が良かったね。
5時ちょうどにおときさんが登場。とにかくパワフルだ。今日が誕生日で73歳になったとは思えない。語りかけも上手くてどんどん惹きつけられていく。リピーターもたくさんいて会場は大いに盛り上がっている。1部の最後にはゲストの手嶌葵さんも登場。彼女のやわらかく透き通った歌声を聴けたのも感激だ。
1時間半を超えて1部が終了。さて2部は彼女が敬愛しているエディット・ピアフの曲がメイン。「パダム・パダム」「ばら色の人生」そして「愛の讃歌」と歌い上げる。アンコールの最後には森繁久彌の息子さんも一緒にみんなで「知床旅情」の大合唱。そして最後の最後に「ハッピーバースディ」をみんなで歌っておときさんの誕生日を祝う。5時から始まって3時間余り。彼女のバイタリティにはほとほと感服した。
それとおときさんの話の中で胸に響くものがあった。それは、「ハッピーバースディ」というのは自分が言ってもらうのではなくてお母さんやお父さんに対して言ってあげるべき言葉なんじゃないかってこと。親がいなかったら自分は生まれていなかった。こうして立派に1年間を生きられて、一番喜んでいるのはきっとお母さんとお父さんだろうしね。そしてまた多くの人の支えがなかったらこの1年を無事には生きてこられなかった。
これって確かにそうだと思った。年を取って誕生日が来るのも何だかなあなんて思ったりしてたけど、その日は自分が喜ぶだけではなく自分を生かしてくれた周りに感謝する日だと考えれば合点が行く。だから誕生日には今までとは違って、お父さんやお母さん、家族や友人たち、周囲の人に向かって自分から「ハッピー・マイ・バースディ。そしてありがとう。」って言ってもいいんじゃないかな……って、思ったよ。