肩たたき

先日実家を訪れた時、母の肩たたきをした。何十年ぶりだろう。小学校に入った頃だろうか。記憶に残っているのは。母の日とか母の誕生日だったか、プレゼントの代わりに肩たたきをしたという思い出がある。それと母に肩たたきをしてあげるといくらかのお小遣いがもらえた。それを手にしてコロッケを買って食べたことや、紙芝居を見に行ったことを思い出す。

その日はテニスが終わっての帰り道だった。テニス仲間のY原さんに今日は実家に行くんだと言ったら、「肩もみぐらいしてあげなよ」と言われた。その時は今更なんて思ってさらっと聞き流した。母の家で何時間かを過ごし帰る段になって父にお線香をあげていた時にふとその言葉を思い出した。

振り向くとテレビを見ている母の背中が見える。ずいぶんと小さな背中だ。赤ん坊の時の自分は夜泣きをよくして、その度に母は自分をおんぶして外を歩いたという。この小さな背中に自分は背負われていたのか。そんなことを考えたらどうしても肩たたきをしなければと思った。

でも言葉に出すのはどうにも恥ずかしい。そこで友達を出しに使った。「母さんの肩たたきをしてくると友達と約束したからその写真を撮るよ」ってね。実際に肩たたきをしたのは本当に短い時間だった。でも、昔を思い出すには十分だった。母が言った。「○○はいい友達を持ってるね」って。嬉しかった。そして今日はもう一度肩たたきに挑戦してきた。「肩たたきをするよ」って今日は素直に言えた。きっとこれからも。

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